奥歯をインビザラインで前方に動かしたいけれど、本当にうまくいくのか不安に感じていませんか?
「抜歯後のスペースがなかなか閉じない」「マウスピース矯正で大きな動きが本当に可能なの?」そんな疑問を抱くのは当然です。特に奥歯の前方移動は、矯正治療の中でも技術的ハードルが高い処置のひとつとされています。
実際、前方移動には確かな固定源やスペースの確保、歯根まで含めた歯体移動が求められるため、ただアライナーを装着しているだけでは移動が不十分になる可能性もあります。そのため、矯正用アンカースクリュー(TAD)やIPR、側方拡大装置などの補助処置が成功のカギを握ります。
この記事では、インビザラインで奥歯を無理なく前方へ移動させるために抑えておきたいポイントを詳しくまとめました。
インビザライン矯正ならさいわいデンタルクリニック
さいわいデンタルクリニックは、北広島市大曲幸町に位置するアットホームな歯科医院で、インビザラインを使った矯正治療に500症例以上の実績があります。デジタル技術を駆使し、3Dスキャナーで精度の高い治療をご提供しています。
当院では一般歯科(むし歯の治療、歯周病の治療、義歯や入れ歯治療)・小児歯科(子どもの虫歯治療、乳歯のトラブル、虫歯予防)・矯正歯科(床矯正治療、インビザライン、マイオブレース)・口腔外科(歯の移植・再植、顎関節症)・審美治療(ホワイトエッセンス)・予防歯科(歯石除去、ブラッシング指導、フッ素塗布)の診療を行っております。気になる症状やお悩みがありましたら、まずはお気軽にご相談ください。
院名:さいわいデンタルクリニック
住所:北海道北広島市大曲幸町4丁目4-2
電話:011-375-6195

インビザラインによる奥歯の前方移動とは?専門用語をわかりやすく解説
前方移動(近心移動)とは?
前方移動、または近心移動とは、奥歯を歯列の前方に移動させる治療技術のことを指します。主に矯正治療で抜歯を行った後のスペースを有効に活用するためや、奥歯の位置を調整して理想的な咬合を形成するために使われます。インビザラインのようなマウスピース型矯正装置でこの処置を行う場合、治療計画や使用する装置、力のかけ方に高度な知識と経験が求められます。
この治療法は、以下のような目的で使われることが多くあります。
- 小臼歯を抜歯したあとのスペース閉鎖
- 出っ歯(上顎前突)や開咬の改善
- 親知らずを奥歯の代わりとして活用したいとき
- 咬合を整えたいときに後方咬合を前方咬合へ変える場合
特に親知らずを活用するプランは年々注目されており、近心移動との組み合わせで高い治療成果を期待される方が増えています。
目的別の近心移動の活用例と治療の難易度をまとめると以下の通りです。
治療目的
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近心移動の対象歯
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難易度
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補助装置の必要性
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治療期間目安
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抜歯後のスペース閉鎖
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第2大臼歯(7番)
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中
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アタッチメント、TADあり
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約12〜18ヶ月
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親知らずの活用
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第3大臼歯(8番)
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高
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高確率でTADが必要
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約18〜24ヶ月
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咬合バランスの調整
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第1大臼歯(6番)
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低
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アタッチメント併用
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約10〜14ヶ月
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出っ歯の改善(前歯の後退)と連動
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7番・6番
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中
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IPRと拡大処置併用
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約14〜20ヶ月
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近心移動の成功には、以下のようなポイントが重要となります。
- 精密なCT撮影と骨格分析による事前診断
- 移動量と角度に応じたアライナー設計
- アタッチメント配置の最適化
- 咬合力に応じた補助装置の選択
以上のように、奥歯の前方移動はインビザラインにおいて決して簡単な処置ではありませんが、正しい診断と計画、適切な装置を組み合わせることで高い治療成果が期待できます。
歯体移動と傾斜移動の違い
インビザラインによる矯正治療では「歯体移動」と「傾斜移動」という2つの移動形式が頻繁に登場します。これらは見た目には似た動きに見えても、歯にかかる力の方向、移動範囲、治療の難易度が異なります。
歯体移動とは、歯の「歯冠」と「歯根」が平行に、つまり歯全体がそのまま横方向へ移動する形を指します。対して傾斜移動は、歯の根があまり動かずに、歯冠が傾いて移動する動きです。つまり、見た目には前に動いたように感じられても、実際には歯の根が動いていないため、かみ合わせのズレや後戻りのリスクが高くなることがあります。
結論として、歯体移動のほうが治療としては理想的ですが、インビザライン単体では完全な歯体移動を達成するのが難しいケースもあります。そのため、アタッチメントを活用して力の伝達効率を高めたり、TADや補助装置と併用したりして、歯体移動に近づける工夫が必要です。
インビザラインにおける移動形式と対応策
移動形式
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説明
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難易度
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対応策
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傾斜移動
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歯冠だけが動き、歯根が動かない
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低
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アライナーのみでも可能
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歯体移動
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歯全体(歯根含む)が平行に移動
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高
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アタッチメント、TAD、IPR併用など
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また、歯体移動がきちんとできていない場合、以下のような問題が発生します。
- スペースの閉鎖が不完全で、歯並びが乱れる
- 咬合(かみ合わせ)にズレが生じる
- 移動完了後に後戻りしやすくなる
- 歯根に無理な力がかかり、歯周病リスクが高まる
インビザラインの歯の移動は、ただ並べるのではなく「どの方向に・どの順番で・どれくらいの距離を・どの程度の力で」動かすかを正確にコントロールする必要があります。その一部として歯体移動と傾斜移動の違いを理解することは、治療前の安心材料となります。
奥歯を前に動かす目的と適応症例!どんな場合に必要?
抜歯後スペースを埋めるための前方移動
矯正治療において抜歯が必要になるケースは少なくありません。特に叢生(歯の重なり)や出っ歯(上顎前突)、正中のズレなどがある場合、小臼歯の抜歯によってスペースを確保し、その隙間を閉じる必要が生じます。このとき、奥歯を前方に移動させて抜歯スペースを埋める処置が重要になります。これがいわゆる「前方移動(近心移動)」です。
この治療は見た目の改善だけでなく、咬合(かみ合わせ)の調整、発音の安定、咀嚼効率の向上など機能的にも大きな意義を持ちます。マウスピース矯正であるインビザラインを用いる場合も、しっかりとした治療計画と補助装置を駆使すれば、精密な奥歯の近心移動が可能です。
インビザラインで奥歯を前に動かすには、まず「移動の対象となる歯」がどの位置かを明確にする必要があります。最も多いのは、小臼歯(4番または5番)の抜歯後に、第6番目または第7番目の大臼歯を前に動かしてスペースを閉じるケースです。このとき、歯体移動が求められるため、傾斜移動だけではスペースが完全には埋まりません。しっかりと歯根ごと移動させるには、アタッチメントやIPR、TAD(矯正用アンカースクリュー)などの補助装置を活用する必要があります。
具体的な治療プランの例は以下の通りです。
抜歯位置
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前方移動する歯
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推奨される補助処置
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治療期間目安
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難易度
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上顎小臼歯(片側)
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第1大臼歯(6番)
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アタッチメント、IPR
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約12ヶ月
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中
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下顎両側小臼歯
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第2大臼歯(7番)
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TAD、IPR、ゴムの併用
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約14〜18ヶ月
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高
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上下4番抜歯
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6・7番両方
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拡大装置+TAD+CT精密診断
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約18〜24ヶ月
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非常に高い
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このように、抜歯スペースをどの歯でどのように埋めるかによって、使用する装置、治療の複雑性、所要時間が大きく異なります。
また、矯正治療では順番や力のコントロールが極めて重要です。前歯を最初に動かすとスペースが閉じるタイミングにズレが生じるため、インビザラインでは奥歯から順番に動かす計画が立てられるケースが多くなっています。
前方移動には次のようなリスクと注意点があります。
- 歯根吸収 過度な力で移動させると歯根が短くなる可能性
- 咬合の乱れ 正確に調整しないと噛み合わせにズレが生じる
- 装着時間 アライナーの装着時間が短いと移動効率が下がる
- 再スキャン 移動が予定通り進まない場合、追加の治療計画が必要
結論として、インビザラインによる奥歯の前方移動は、高度な治療技術と綿密な計画があれば実現可能ですが、患者一人ひとりの骨格、歯列状態、年齢、習慣(装着時間や噛みしめ癖)などに応じた個別対応が不可欠です。適切な矯正歯科医による判断とサポート体制が整っていることが、成功への鍵を握ります。
親知らずを奥歯の代用として活用
近年注目されている矯正手法のひとつに、「親知らずを奥歯の代わりに使う」という考え方があります。これは、親知らず(第3大臼歯)を抜歯せず温存し、前方にある第2大臼歯(7番)や第1大臼歯(6番)を抜歯してスペースを確保することで、親知らずを本来の奥歯ポジションまで前方に移動させて、機能的に利用する方法です。
この手法に関して、「親知らずは本当に使えるのか?」という疑問が多く寄せられています。
結論から言えば、親知らずを奥歯の代わりとして使えるかどうかは、位置・方向・根の形・萌出状態など多くの要素に左右されます。完全に骨の中に埋まっている埋伏歯や、著しい傾斜を伴うものは適応が難しい場合があります。一方、ある程度垂直に生えており、歯根も形成されている親知らずであれば、前方に移動させて6番・7番の代用にすることが可能です。
以下のようなパターンで適応が検討されます。
親知らずの状態
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適応可否
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移動対象
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治療難易度
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使用する補助装置
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完全萌出+垂直方向
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高
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7→6→5へ
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中
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アタッチメント、TAD
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半埋伏+軽度傾斜
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中
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7番相当まで
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高
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拡大装置、リファイメント
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水平埋伏+位置ズレ
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低
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適応不可
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非適応
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抜歯推奨
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親知らずを利用した前方移動には、次のようなメリットとデメリットがあります。
まずはメリットから。
- 将来的な抜歯リスクを回避できる
- 残存歯数を保てる
- スペースを最大限活用できる
デメリットも見ていきましょう。
- 歯根が未完成の場合は長期治療になる
- 水平埋伏歯は移動が困難
- 補助装置や追加処置が必要になりやすい
この治療方針は、インビザラインでの症例数が少ない医院では提案されないこともあります。したがって、親知らずの活用を前提としたい場合には、CT診断が可能で、インビザラインに精通した矯正歯科を選ぶことが成功への近道となります。
インビザラインの得意・不得意な動きとは?歯体移動・傾斜移動の違い
インビザラインが得意な動き
インビザラインは、透明なマウスピースを用いた矯正装置で、審美性の高さと取り外しの自由度から、幅広い年齢層に支持されています。その中で、インビザラインが得意とする歯の動きにはいくつかの明確な特徴があります。特に前歯の傾斜移動、圧下(押し下げる動き)、そして側方拡大などは、力の方向と構造上の理由から高い精度で達成可能です。
インビザラインの得意な動きを理解するうえで、患者が抱きやすい疑問には次のようなものがあります。
- どのような歯の動きがインビザラインに向いているのか?
- 前歯の治療は短期間で終わるのか?
- 側方拡大とはどういう意味か?
- 他の矯正装置と比べてインビザラインの強みは何か?
- 得意な動きを活かした治療設計はどうすればよいか?
これらの疑問を解消するために、得意な動きについて詳細に整理すると以下の通りです。
動きの種類
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部位
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精度
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補助装置の必要性
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特記事項
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傾斜移動
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前歯
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高
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不要または軽度
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最も得意とされる動き
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圧下(intrusion)
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上顎前歯、下顎前歯
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中〜高
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アタッチメント使用推奨
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過蓋咬合の改善に有効
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側方拡大
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犬歯~小臼歯
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高
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不要〜軽度
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歯列の横幅を広げるために適している
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回転(rotation)
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小臼歯
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中
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アタッチメントが効果的
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歯の軸の向きを変える動き、形状により難易度変動
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インビザラインは、一定の力を歯に加え続ける設計となっており、その力のかけ方が前方や側方への移動には最も効果的に作用します。
とくに、前歯の傾斜移動はインビザラインの代表的な得意分野です。これは歯の表面に直接力が加わる構造上、力の方向と目的が一致しやすいためです。一方、側方拡大についても、歯列全体の幅を広げることで「スペースを確保する」「叢生を解消する」などの目的に効果的です。
さらに、動かしやすい前歯や側方歯から治療が始まる設計になっているケースが多く、患者にとっても効果が実感しやすい点でメリットとなります。
インビザラインが苦手な動き
インビザラインは多くの症例で有効な矯正方法ですが、すべての歯の動きに万能というわけではありません。とくに苦手とされる動きとして代表的なのが、「奥歯の垂直移動(挺出・圧下)」と「歯体移動(トランスレーション)」です。これらはマウスピースの構造上、力の伝達が難しく、理想的な移動が実現しにくいとされています。
インビザラインで苦手な動きを整理すると、以下のような特徴が挙げられます。
動きの種類
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説明
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難易度
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補助装置の必要性
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代替治療法例
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垂直挺出
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奥歯を上方向に引き出す動き
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高
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ゴム・TAD・バイトランプ併用
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ワイヤー矯正が優位なケースが多い
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奥歯の圧下
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奥歯を下方向に沈める動き
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高
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TAD必須
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外科的矯正も検討対象となる
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歯体移動(水平)
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歯冠と歯根を平行に移動させる動き(後方・前方)
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高
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アタッチメント+IPR+TAD併用
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症例によってハイブリッド矯正
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特に奥歯の垂直方向への動きは、歯根が太く移動量が大きくなりやすいため、マウスピースの弾性だけでは力が不十分になる傾向があります。その結果、「動かない」「後戻りする」「装置が合わなくなる」などのトラブルが発生しやすくなります。
「インビザライン 歯体移動 難しい」や「インビザライン 垂直移動 できない」といった検索ワードも多く見られますが、これは多くの患者がこの種の動きに対して不安や疑問を持っていることの証明でもあります。
また、近年ではこれらの苦手な動きを克服するために、以下のような補助技術が活用されるケースが増えています。
- アタッチメントの最適配置(力の伝達を高める)
- ミニスクリュー(TAD)を固定源とする
- 垂直ゴム(エラスティック)の併用
- リファイメント(再スキャン)で逐次修正
これらの方法を使えば、一定の症例においては十分に対応可能です。ただし、診断と治療計画の段階で「どの動きが難しいか」「どの程度までインビザラインで可能か」を正確に把握しておくことが前提です。
特に「矯正 奥歯 前方移動」や「インビザライン 奥歯から動かす」といった検索ニーズは、奥歯の大きな移動を必要とするケースが多いため、補助装置の活用だけでなく、ワイヤー矯正との併用(ハイブリッド矯正)を前提とした治療戦略も重要となります。
奥歯の前方移動が難しい理由とその限界
前方移動に必要な力のコントロール
奥歯を前に動かす矯正治療は、特にインビザラインのようなマウスピース矯正では高い精度と戦略が求められます。ワイヤー矯正と比較して、インビザラインは力のかけ方に独特の制約があるため、「どのように力をかけるか」が治療成功の重要なカギとなります。
歯を動かすためには、生理的な範囲内で、持続的かつ弱い力を与えることが大切です。これを「生理的矯正力」といい、おおよそ20~150gの範囲とされています。前方移動の対象となる奥歯は、歯根が大きく、噛む力(咬合力)も強いため、マウスピースだけでコントロールするのは簡単ではありません。
そのため、インビザラインによる奥歯の前方移動を効果的に進めるためには、以下のような複数の要素を適切に組み合わせる必要があります。
要素
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解説
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注意点
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アライナーの厚み
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厚めのマウスピースにすることで、より大きな力をかけることが可能になります
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装着感の悪化や破損のリスクが上がる可能性があります
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アタッチメントの設計
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歯の表面に取り付けて力の伝達効率を高めます
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デザインが不適切だと効果が出にくいことがあります
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ステージの分割
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少しずつ確実に移動させるため、計画的に段階分けして進めます
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治療期間が長くなる可能性があります
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IPR(ディスキング)
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歯と歯の間に微小な隙間を作って移動スペースを確保します
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適切な実施が求められ、歯への負担も考慮が必要です
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エラスティック(補助ゴム)
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動かしたい方向に補助的な力を加えるために使用します
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装着の継続が必要で、患者様の協力度に依存します
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これらの力の制御は、装置の設計だけでなく、患者自身による装着時間の厳守も非常に重要です。インビザラインは1日20時間以上の装着を前提としており、これが守られなければ予定通りに歯が動かないリスクが高まります。
また、アタッチメントの使い方も非常に重要です。これは歯の表面に取り付ける小さな突起で、アライナーの力を歯に効率的に伝えるための役割を担っています。たとえば、歯を単純に傾ける「傾斜移動」とは異なり、歯の根っこ(歯根)ごと動かす「歯体移動」には、より繊細で正確な力の配分が必要です。
「なぜこんなに時間がかかるのか」「動きが遅れている気がする」といった不安を感じる場合もあります。その際に考えられる理由は、以下のような点です。
- アタッチメントの位置が適切でない
- アライナーの厚みや素材の選定が不十分
- 患者様の装着時間が20時間未満
- 追加の補助装置が未使用または装着が不十分
- IPRの量や位置が適切でない
これらの要因を一つひとつチェックし、必要に応じてリファインメント(再設計)を行うことで、治療計画に修正を加えます。
治療の途中で歯の動きが止まってしまう「アライナーストール」と呼ばれる現象も、力のコントロールに問題がある可能性が高いため、早期の対応が必要です。インビザラインの治療では、3Dシミュレーション(ClinCheck)を活用して、毎ステージごとの歯の動きと力のかかり方を正確に把握し、調整を行うようになっています。
装置の構造上の制限とリスク
インビザラインは透明で取り外しができるマウスピース型矯正装置として、審美性と利便性に優れていますが、その構造上、いくつかの明確な制限とリスクが存在しています。とくに「奥歯の前方移動」を行う際には、装置そのものがもつ物理的な限界を十分に理解しておくことが重要です。
まず、マウスピース型のアライナーは「全体を覆う構造」であるため、1本の歯だけに力を集中させにくいという特徴があります。ワイヤー矯正であれば、ブラケットとワイヤーによって狙った歯にピンポイントで力を加えることが可能ですが、インビザラインではアライナー全体が一体となっているため、力が分散してしまいます。
また、アライナーを歯にしっかりと密着させるための「プレッシャーポイント」には、使用中にわずかなズレや浮きが生じることがあります。とくに奥歯のように歯根が長く、かつ咬合力が強い部位では、想定通りの動きが起こらず「後戻り」や「移動の停滞」が発生するリスクが高くなります。
インビザライン治療における代表的な制限とリスクをまとめました。
制限・リスク
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詳細
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説明
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プレッシャーポイントのズレ
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アライナーの浮き上がりや密着不足
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力の伝達が弱くなり、移動が停滞する原因になります
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アタッチメントの破損・脱落
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歯に取り付けた突起が取れる
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力の方向制御が不安定になり、予定外の動きが生じる場合があります
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歯根の回転制御の難しさ
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奥歯の大きな回転移動は難しい
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歯根を含む全体的な歯体移動には制限があります
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アライナーの変形や摩耗
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使用中の変形や噛み締めによる摩耗
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計画された力が伝わらなくなり、再製作が必要になることがあります
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着脱時の動揺
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毎日の装着・脱着による影響
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歯が動く途中でプレッシャーのかかり方が変化する可能性があります
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さらに注意すべき点として、マウスピース矯正は「咬合調整(かみ合わせの微調整)」が難しいという性質もあります。奥歯の位置が少しでもズレると、上下の噛み合わせが崩れやすくなり、矯正後の安定性が損なわれるリスクもあります。
奥歯を動かす場合、特に注意が必要なのは「動かした歯が後戻りするリスク」です。矯正終了後に保定装置(リテーナー)をしっかりと装着していなかったり、装着時間が短かったりすると、せっかく動かした歯が元の位置に戻ってしまうことがあります。
インビザラインの補助処置と成功条件!TADや拡大装置、IPRの役割
TAD(矯正用アンカースクリュー)の活用
インビザラインによるマウスピース矯正は、装置が目立たないことや取り外しができる点で非常に人気がありますが、すべての歯の動きに対して万能というわけではありません。特に奥歯を固定したい場面では、マウスピース単体では十分な固定源が得られないことがあります。そうした際に活用されるのがTAD(Temporary Anchorage Device)、つまり矯正用のアンカースクリューです。
TADは歯槽骨に直接設置する小さなチタン製のネジであり、強固な固定源として機能します。たとえば、奥歯をしっかりと固定しながら前歯を後方へ移動させたい場合、TADがあればその方向に的確な力を加えることができ、歯の動きを計画通りに進めやすくなります。これにより、治療の効率が上がり、患者への負担や治療期間の長期化を抑えることも可能です。
一方で、TADの設置には専門的な技術が求められ、口腔内の状態によっては設置が難しいケースもあります。特に歯周病の進行や骨量が不足している方には適用が難しいため、事前の診断が非常に重要です。また、患者の不安要素としては「痛み」や「手術のリスク」がありますが、実際には局所麻酔で処置が行われるため、痛みは最小限に抑えられることが多く、術後の回復も比較的早いとされています。
また、TADを併用することで歯のコントロール性が高まり、従来であれば難しいとされていた動きにも対応できるようになります。たとえば、重度の出っ歯や口ゴボの改善、叢生の解消といった複雑な症例でも、TADを用いた固定により、アライナーの力がより正確に伝わるようになります。
IPRや拡大装置の併用で得られる効果
インビザラインの治療でしばしば登場する補助処置が、IPR(Interproximal Reduction 隣接面削合)や歯列拡大装置です。これらは、歯の移動スペースを確保したり、全体のアーチバランスを整えたりするために使われる重要な手法です。
まずIPRとは、歯と歯の間を微細に削ることでわずかな隙間を作り出し、歯を正しい位置へ移動させるスペースを確保する処置です。1回あたりの削合量は0.1mm〜0.5mm程度と非常に小さいため、患者への負担は少なく、エナメル質の保護を前提に行われます。
IPRが効果的な症例は以下の通りです。
- 軽度〜中等度の叢生(歯がガタガタに並んでいる)
- 正中のズレ
- 抜歯を避けたいケース
拡大装置は、主に上顎・下顎の歯列幅を広げる目的で使用され、骨格的に余裕がある患者に対して有効です。側方拡大によってアーチに余裕が生まれ、歯の移動がスムーズになるだけでなく、かみ合わせの改善や口元のバランス調整にもつながります。
IPRおよび拡大装置の活用時に得られる効果と目的をまとめると以下の通りです。
処置名
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主な目的
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適応ケース
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IPR
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スペースの確保
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軽度叢生、非抜歯希望症例
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拡大装置
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歯列幅の拡張、アーチバランス調整
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側方拡大、骨格的余裕のある症例
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一方で、IPRや拡大装置を過度に用いることにはリスクもあります。たとえば、IPRを必要以上に行えば、エナメル質が薄くなり、知覚過敏やむし歯のリスクが高まることがあります。また、拡大装置による過剰な側方拡大は、かみ合わせに悪影響を及ぼす可能性もあるため、使用には正確な診断が欠かせません。
IPRや拡大装置は、費用面でも比較的低コストで導入できる処置でありながら、インビザライン治療の成功率を大きく左右する要素です。
治療計画の段階でこれらの処置が含まれているかを確認し、費用と効果のバランスを理解することが、納得のいく治療成果につながります。
まとめ
インビザラインによる奥歯の前方移動は、矯正治療の中でも高度な技術と正確な治療計画が求められる処置です。特に抜歯後のスペースを活用して奥歯を前に移動させるためには、アライナー単体では限界があるケースも少なくありません。
そのため、治療を成功させるためにはTAD(矯正用アンカースクリュー)の活用や、IPR(歯と歯の間をわずかに削ってスペースを確保する処置)、拡大装置の併用といった補助処置の理解が不可欠です。これらの手法は、マウスピース矯正の中でもより専門性が求められる内容であり、患者一人ひとりの症例に応じた最適な組み合わせが必要となります。
たとえば、TADを用いて奥歯をしっかり固定することで、前方移動に必要な力を安定して発揮できるようになり、移動距離や方向の精度が向上します。また、IPRや拡大装置を併用することで、移動可能なスペースを無理なく確保でき、治療期間の短縮にもつながることがあります。
とはいえ、「想定外の費用が発生するのでは?」「後戻りのリスクがあるのでは?」といった不安を抱くのは自然なことです。そうした悩みに対しても、実績豊富な矯正歯科でしっかりと説明を受けることが、安心につながります。
インビザライン矯正ならさいわいデンタルクリニック
さいわいデンタルクリニックは、北広島市大曲幸町に位置するアットホームな歯科医院で、インビザラインを使った矯正治療に500症例以上の実績があります。デジタル技術を駆使し、3Dスキャナーで精度の高い治療をご提供しています。
当院では一般歯科(むし歯の治療、歯周病の治療、義歯や入れ歯治療)・小児歯科(子どもの虫歯治療、乳歯のトラブル、虫歯予防)・矯正歯科(床矯正治療、インビザライン、マイオブレース)・口腔外科(歯の移植・再植、顎関節症)・審美治療(ホワイトエッセンス)・予防歯科(歯石除去、ブラッシング指導、フッ素塗布)の診療を行っております。気になる症状やお悩みがありましたら、まずはお気軽にご相談ください。
院名:さいわいデンタルクリニック
住所:北海道北広島市大曲幸町4丁目4-2
電話:011-375-6195

さいわいデンタルクリニックについて
さいわいデンタルクリニックは、北広島市大曲幸町に位置するアットホームな歯科医院で、患者様のさまざまな歯科のお悩みに対応しています。 当院は、インビザラインを用いた歯の矯正治療において北海道屈指の症例実績を誇り、500症例以上の経験を持っています。他院では受けて頂けない難しいとされる症例にも対応可能で、短期間での治療や幅広い価格帯でのご提案が可能です。 特に、近年のデジタル化の波に乗り、口腔内3Dスキャナー「アイテロ」を導入しており、マウスピース矯正や前歯用矯正の精度が向上しています。 さらに、当院の特性を活かしたホワイトニングもご提供しております。 また、クリニックは持続可能な開発目標(SDGs)にも取り組み、患者様の健康寿命の促進や環境に配慮した治療を目指しています。 働きやすい環境の実現にも力を入れ、ホワイト企業認定ゴールドの認定を受けています。 患者様が安心して通院できるよう、日々の治療に真摯に取り組んでいます。
他院との違い
マウスピース矯正は、従来の方法とは違い、交換式のマウスピースを使用して歯を整える治療法です。 この手法は導入が容易であるため、多くの歯科医院で手頃な価格で提供されるようになっています。 ただし、マウスピースがシンプルで手軽だからと、位置やアクセスの良さだけで歯科医院を選ぶと、歯の動きに関する知識や特定の技術の経験が不足している医院での治療は、時として矯正の失敗につながることがあるという事例が増加しています。 マウスピース矯正は一見シンプルに見えますが、その成果は歯科医師の経験や実績に大きく左右されます。 特定の技術の実績、治療の管理方法、矯正歯科の全体的な知識や技術を持つ医院での治療が、成功への鍵となる要素です。
当院では、インビザライン矯正の実績も豊富なため、他院では受けて頂けない難しいとされる症例にも対応可能で、短期間での治療や幅広い価格帯でのご提案が可能です。
よくある質問
Q. マウスピースだけで奥歯をしっかり前に動かせるのでしょうか?
A. 奥歯の前方移動には「歯体移動」と呼ばれる歯根ごとの移動が必要になるため、マウスピース矯正単体では不十分なこともあります。特に奥歯を傾斜ではなく「まっすぐ」動かすには、TADなどの固定源を活用し力の方向を安定化させる処置が有効です。力の分散による移動効率低下やプレッシャーポイントの不安定性による後戻りのリスクを避けるためにも、装置の選定と力のコントロールがカギになります。
Q. インビザラインで親知らずを奥歯の代わりに使うことは可能ですか?
A. はい、抜歯後のスペースを埋める際に、親知らずを7番(第二大臼歯)の代わりとして活用するケースは存在します。ただし、この方法は歯列や骨格、咬合の状態など複数の要素を専門的に評価したうえでの判断が必要です。CTなどの三次元診断により、歯根の位置や角度、咬み合わせのバランスを詳細に確認することで、移動可能性やリスクを最小限に抑える治療計画が立案されます。
Q. インビザラインの前方移動がうまくいかないのはなぜですか?
A. 奥歯の前方移動は、移動距離が長く力の分散も起こりやすいため、他の部位よりも成功率に差が出やすい領域です。アライナーの交換間隔を5日など短縮したり、装着時間が不足したりすると、歯の動きが計画通り進まなくなります。さらに、動きにくい歯にはアタッチメントの追加やリファイメント(再スキャンによる微調整)が必要になることもあります。こうした場合でも、矯正歯科専門の医院では段階的な再評価により対応する仕組みが整っているため、早期の相談が鍵になります。

医院概要
医院名・・・さいわいデンタルクリニック
所在地・・・〒061-1270 北海道北広島市大曲幸町4丁目4-2
電話番号・・・011-375-6195